くうそうとたからばこ

ゲームとか何か自分に刺さったものを書くところ

鳥類弁護士の事件簿-感想戦

  ――これは、鳩ではない。

 

 

◆はじめに

Indie Worldでも紹介されていた鳥類弁護士の事件簿(原題:Aviary Attorney)。

ビジュアル8割、裁判モノ2割の興味で気になっていて、ふと手を出してしまった。

 

 

19世紀パリを舞台に弁護士の隼(ハヤブサ)、ジェイジェイ・ファルコンになって数々の陰謀を暴いていく――。そんな感じのストーリー。

 

Nintendo Switch版は2022年リリースだが、英語圏ではPC版が2015年に出ていたのだ!!

store.steampowered.comそ、そんなに前のゲームだったのか。

 

システム的にはバックログが無かったり、カーソル選択の初期位置が無選択だったり、スキップが弱かったり…と気になるところもあったけども、正直言ってそんなこと吹っ飛ばすくらい世界観に引き込まれました。

 

◆気になるキャラクターのお話

 

特徴的なイラストは本作オリジナル……ではなく、19世紀にフランスで活動していた風刺画家J・J・グランヴィルの『動物たちの私生活・公生活情景』に描かれている、頭は動物、体は人間のキャラクターをほぼそのまま持ってきています。

 

陪審員の方々もそうです。

 

元々が階級社会を皮肉った風刺画だからか、各キャラクターは強烈な個性をもって描かれている。よくよく見れば”キモい”ようにも見えてしまうが、進めていくとキャラクターに愛着を持ってしまう。

特に相棒のスパロウソンは物語が進むにつれてとっても好きになった。

 

 

瞬きや動き等のアレンジを付けている部分もあるにはあるけど、基本的には元の絵をそのまま動かしていることが多いので、表情が豊かということも無い。

いっぱいスクショを撮ったけれど、構図もほとんど一緒だ。

 

 

それなのに、物語を読んでいると彼らは生き生きして、愛せてしまう。

 

ひとえに文章を中心とした表現がとっても素晴らしいからだ!!!

コミカルであり、テンポが良く、それでいてエッジが効いた文章に、小気味いい効果音と演出(だいたいが集中線)でググっと会話に引き込んでくれる。

動物ネタとメタネタの混合技だってあるぜ!!

 

もともと英語での表現で、慣用句やその言語でしか使われないような言い回しも多い。それでも、かなり丁寧にローカライズを行ったことで没入感を削ぐことない表現が実現しています。

 

実はキャラクター名も変わっていたりして、かなり気合が入っている。すげえ。

正直、ほとんどの場面で翻訳されているとは思えないほど自然です。

 

 

また、コミカルな場面が多い中に、たまに尖った表現も潜んでいて、この絵柄も相まって…なんというか、良い。

 

ほんと、どうやってここまでひねくれた表現をもってきたんだ。文意を読み取ったうえでの翻訳、これがプロの所業か、素晴らしい。

 

かなりフォローしてあるとはいえ、ある程度フランス圏の知識を持っているともっと楽しめると思う部分もあります。フランスが舞台だしね、気になったワードはせっかくなら少しだけ調べてみると、より一層入り込めるかも。

このゲームで一番好きな場面。ヴォルテールは哲学者です。

 

ちなみに、見た目や軽快な文章とは裏腹に?物語で起こる出来事は結構悲惨なものが多いです。当時のフランスが、ということに加えて、題材になっているJ・J・グランヴィルの表現もあって、革命やら闘争やらが頻繁に出てきます。

そして、死ぬときは死ぬ。死ぬことがそこまでトクベツじゃない。死生観が現代とは違うのか、それとも国柄なのか、なんとなく国内で出ている物語とは扱われ方が少し違う気がします。

第1話の被害者。かえるくん…名前なんだっけ

 

◆音楽について

 

基本的に19世紀のフランスで作曲されたクラシック(作中ではある意味現代)音楽をBGMにしています。

本作のテーマ曲などの一部にオリジナル楽曲はありますが、大半がクラシックをそのまま持ってきています。知らないで聴いたらそういうものだと自然に思える場面が大半です。個人的には”バッカナール”(歌劇「サムソンとデリラ」より)が好きです。

 

まあ、選曲は曲名から持ってきている感もあって、癖強かったりする曲が無いことも無いけども

Steamではサントラも売ってますよ。

 

 

◆そういえば、ゲームシステムについて。



気になってみている人であれば、何となく逆転裁判みたいな感じかな?と思うかもしれないですが、そうです

それっぽいキャラ付けも多々見られます。

 

 

基本的には探索パートと裁判パートが分かれていて、探索パートで情報収集して裁判パートで真相を…という流れは同じ。

 

探索パートでは所持金の概念がある部分が大きな違いかなぁというくらい。

本筋のストーリー攻略だけであれば、お金はあんまり気にしなくて良いです。

個人的に逆転裁判は探索パートが義務で、裁判パートでずばずば矛盾指摘して真実に近づいていく部分が好きだったのですが、今作の探索パートではコミカルな会話が多かったので、どちらかというと探索パートが好きでした。

 

よほど変な選択肢選んでもゲームオーバーにはならないし、気楽にできる一方、ゲーム性としては、ちょっと時間制限などが多くて気になる人はいるかもです。

特にエンディング回収はちょっとめんどくさかった。日付別のセーブがあんまり意味ない。

 

 

 

ただ、逆転裁判より全体的にテンポよく進みます。悪く言えばあっさりと進みます。

裁判パートでの尋問シーンはかなりコンパクトです。

 

尋問対象の証言は一括で表示して、気になるワードを選ぶ形式。

逆転裁判でいう「待った」をして、進めていきます。「異議あり」は無い。

あんまりしつこく質問すると陪審員が嫌がって負けたりします。

逆転裁判の後半で「待った」を制限されている状態が基本だと思ってもらえれば、それです

 

 

◆まとめ

ゲームなんだけども、操作感等はさておいて、世界観がめちゃくちゃ好きになれた作品です。

日本語表現が本当に素晴らしいので、ローカライズが光った作品でもあると思います。

 

ちょっとだけ値段が張りますが、絵柄が気になった人、ADVが好きで気になった人は直観を信じて買ってみたほうがいいんじゃないかと思います!

きっと最後にはスパロウソンが好きになっていることでしょう。